第1講 講議資料


調査こぼれ話
土蔵(くら)は、家財や大切なものを火災や盗難から守るために外まわりを不燃化した特別な家屋である。壁の厚さは7寸〜8寸5分(21cm〜26cm前後)ほどあり、扉は頑丈に造られ、窓は小さく、ねずみ返しの仕掛けまで施してある。用途によっては床の高さまで異なっており、見るからに堂々とした建造物である。一般の家屋より建築費がかさむため、その昔土蔵を造ることは、資産家や金持ちの証明でもあった。ただ現在では、新し<土蔵を造る人はほとんどいない。

 貧富の差が激しかった昔、土蔵は盗賊(泥棒)にとって“お宝”の詰まった狙い甲斐のある獲物でもあった。当然持ち主は盗賊対策に知恵を絞るわけである。事前調査のため、私が竹之内資郎氏宅を訪ねた析、ご主人から土蔵についてのいろいろな話をお聞きした。
その中から二つの土蔵破り対策にまつわる話と、その家にとって土蔵がいかに大事なものであったかを知ることができた一つの話を書き留めておく。

 土蔵の中の“お宝”を頂戴しようとする盗賊は、扉の錠前が壊せない場合、高い場所にある鉄格子入りの窓を破壊するよりも、壁に穴をあけることを考える。厚い壁は、本来火災から家財や商品を守るための工夫ではあるが、何しろ土壁であるから、これを破壊して侵入することもあったらしい。

●海鼠壁のいろいろ
l.四半張り 最も一般的、目地が斜めなので水切りがよい。
2.いも張り 古いタイプの張り方。
3.馬乗り張り いも張りをずらした張り方。
4.四半変形  海鼠の幅に変化を求めたもの。,
5.四半変形  海鼠の形を変えたもの。
6.青海波   特殊な形の瓦を使ったもの。
7.馬乗り変形 喝乗張りで平瓦の真中に穴をあけておき、釘止めしたもの。
8.亀甲    特殊な形の瓦を使ったもの。
9.いも変形 いも張りで平瓦の真ん中を釘止めしたもの。
10.いも変形 海鼠の形を変えたもの。
吉田桂二:建築の絵本 日本の町並み探求     P114 彰国社 1988引用