第1講 講議資料


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 一般の木造家屋では、新築してから25年も過ぎればあちこちが痛んで修理が必要になります。40〜50年も過ぎれば修理が追いつかず、建て直さなければなりません。
 土蔵・蔵は、都合で自宅として使用する以外、常時人が使むことがないため案外内部の傷みは少ないと言えます。しかし、外部は自然災害、特に地震や大雨、台風などでは一般の木造家屋と同様に傷みやすく、壁にひび割れができたり、白壁がはげ落ちたり、屋根元が壊れ,たり、落ちたりします。やはり修理は必要なわけです。さて、建築時期の質問でご承知のように、岡田のまちの土蔵・蔵の大半は、築後すでに60年以上も経っています。古いものでは200年前後にもなります。大金をかけ、しっかりとした造作でも、いまや老朽化の一途をたどっていることは誰の目にも明らかです。
 ところが、上の表を見る限り普請以降、今日までに大改修をした土蔵や蔵は、全体で24棟、27.9パーセントにしか過ぎません。
 次の質問の「維持管理」の項でもお分かりのように、損傷が相当に進んでいることは確かです。調査の段階で、「物置同然なので、いっそ壊してしまいたい」と居った方、一方で「ご先祖が造ったものだから、費用が工面できれば修理したい」と居られる方もおられ、所有者も大変なんだと実感いたしました。


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 現在、良好な状態にある土蔵・蔵は、およそ3分の1です。逆に、部分的破損に全体的破損を合わせると、53棟、61.6パーセントにも達しており、ことに外壁と屋根の損傷がひどいことが分かります。
 その昔、木綿業者や地主など富裕層の象徴としての土蔵や蔵も、いまや木綿業が衰退し、職某々生活様式の変化にともない、“財産やお宝”を納める場所ではなくなり、物置同然に扱っている家も多数あるようです。その上、年とともに破損が拡がるわけですから、その扱いに困っている所有者は少なくおりません。調査の中で次のような話を幾人かの方に伺いました。「あちこちが傷んでいる土蔵は維持するだけでも大変だ。いらないといって壊すにもお金がかかるので、そのままにしてある」。その反面、「ご先祖が造ったものだから、費用がかかろうが修理をして、次の代に渡したい。それにしても修理代は馬鹿にならないし・・・」と、半ば願望、半ばあきらめの表情で語ってくださった方もおられました。
 たとえ土蔵・蔵を所有していても、蓄積が少なければ修理をするだけでも大きな負担とならざるを得ません。こうしてみますと、その家の経済力にもよりますが、土蔵や蔵の維持・管理は丸々すく解決できるものではないようです。